
AIに任せているのに、決めたことや「できない」と伝えたことを何度も聞き直される。怒っても次の会話には残らないので、覚えさせる仕組みを作った話。
2026-10-10

AIに作業を任せているのに、前に決めたことや「それはできない」と伝えたことを、また聞き直される。これは地味にこたえる。同じ説明を繰り返すのは、時間も気力も使うからだ。
僕も同じ目にあった。しかも一度ではなく、同じ趣旨のことを二回言っていた。そこで気づいたのは、AIに怒っても何も変わらないということだ。AIは会話が新しくなると、前の内容を覚えていない。だから、人が覚えさせる仕組みを作るほうが早い。この記事では、僕が実際にやったことを材料に、その考え方を書いてみる。
僕は、AIが進められるところまで進めて、できないところだけ僕が手伝う形で、いくつもの作業をしている。
10月2日、LINEの連携に使う機密の値が必要になった。するとAIが僕に「Vercelという画面を開いて、その値を見て教えてください」と頼んできた。
ところが、Vercelの機密設定は書き込み専用だ。管理画面を開いても値が表示されない。見たくても見られない。AIの頼み方は、値が画面に出る設定なら自然な手順だ。ただ今回は、その前提が成り立たなかった。
僕はそのまま伝えた。「毎回言うけど、管理画面を開いても数字は出てこない。覚えといて。どこかに登録しといてって、俺いつも言ってる」と。
実は9月24日にも、「あとからその鍵を教えてとか言わないでね」と同じ趣旨のことを言っていた。つまり、一度伝えたのに、会話が変わったらまた同じ頼みが戻ってきたわけだ。
原因は、AIが会話をまたいで覚えていないことにある。新しい会話が始まると、前の会話で決めたことは手元にない。だからAIにとっては、毎回が初めての相談になる。過去に僕が断ったことを知らないまま、いちばん自然に思える手順を提案してくる。悪気があるわけではなく、ただ知らないだけだ。
人間の同僚なら「前にも言ったよね」で通じる。でもAIには通じない。言った事実が相手の中に残っていないからだ。
ここを勘違いしたまま「何度言えばわかるんだ」と伝えても、その言葉は次の会話には持ち越されない。僕が10月2日に強めに言ったことも、そのままでは次の会話で消える可能性がある。怒っても残らないが、メモなら残る。
だから発想を変えた。AIに覚えてもらうのではなく、AIが毎回読める場所に、人が書いておく。覚えるのは仕組みの側に任せる。
やったことは、大きく三つだ。
一つ目は、たとえば「Vercelの機密設定は書き込み専用で、管理画面では値が見えない」と一文で書いておくことだ。二つ目は、メモを読むことを頼みごとの前の決まった手順にしておくことで、聞き直しが起きる前に止められる。
三つ目が今回の件に直結している。以前は、AIが僕に値を見て教えてほしいと頼んでいた。今は、僕に頼まない。発行元のサービスで確認し直す。それでも必要なら、発行し直す。この順番をあらかじめ決めて、メモに入れた。その場で僕が判断する必要もなくなる。
メモに書くときのコツは、「やらないで」だけで終わらせないことだ。今回なら「管理画面では値が見えない」という事実に加えて、「代わりにこうする」まで書く。禁止だけだと、AIは別の頼み方で近いことを聞いてくるかもしれない。代わりの手順があれば、その道に進める。
メモに入れる項目は、次のように分けて考えると整理しやすい。
メモは短くていい。この三つが一行ずつあれば、AIは次の会話でも同じ場所から始められる。
AIに同じことを聞かれるのは、AIが怠けているからではない。会話が変わると前の内容を覚えていない、という仕組みの問題だ。
だから、言い直して怒るより、書き残す場所を作って、頼む前に確認させるほうが早いと僕は考えている。10月2日の件では、「見えない」という事実と、「発行元で確認する、必要なら発行し直す」という手順をメモに入れた。
もし今、同じ説明を何度もしているなら、一番多く繰り返している一言を、まずメモに一行書いてみてほしい。そこから少しずつ増やしていけば、説明する回数は減らせるはずだ。完璧なメモを最初から作る必要はない。同じことを言った二回目が、メモを作るきっかけになる。
冒頭の写真は、ドアのそばの壁に、無地のメモを1枚ピンで留めたものにした。出かける前に必ず目に入る場所に書いておく。その考え方を形にしたかった。